
馬のミサンガ?
「ね、兄さん、困ってんだよ…。うちの馬たち、森から全然出てきてくれないんだよ…。今年は良い夏だから草はいい感じでさ、すっかり太ってくれているんだけど、暑いもんだから森にはいったまま出てこないんだ。」
「ん?そんじゃ、元気すぎるってことじゃねぇか。おまえ、大丈夫か?これからの調教で乗馬ツアー用の馬たち準備出来るんか?」
「それだよ、頭が痛いのはさ。ま、お客さんの分はたぶん大丈夫。クセの悪い奴は売り払ったり、食ったりしたしさ。でもさ、スタッフたちの馬の調教が間に合わないかな?」
「おいおい、まさか、俺の馬…また、未調教ってことか?」
「いや、二回くらいは乗っておいたよ。うん。去年くらいには…かな。」
「それって、結構、面倒って事だろ」
「いいじゃん、大丈夫だよ。」
「おまえ、俺をおまえらと同じに扱うんじゃねぇよ」
「うーん、それよりさ、馬たちを追い立てやすくしないとさぁ…。うちに連れてくるのがたいへんなんだよねぇ」(おい、それよりさ…じゃねえだろ!俺の馬もちゃんと調教しとけよ!)
なんて会話をしていた翌日。
近所の牧民と二人がかりでひと群れ連れ帰ってきた。柵にいれたあと、後ろ足のくるぶしのすぐ上部分(ボルビという)を紐できつく縛り上げた。
「なに、あれ?」
「あー、ボルビロフっていうんだよ」
「?????」
作業が終わってから、家に戻って、なんだあれ?と聴くと
「馬の行動制限をする方法がいくつかあるんだよね。それのヒトツ。あそこを縛り上げておくとビッコ歩きになって、種馬のヤツが群れをあまり追い立てなくなるんだよ。だからこちらが群れを誘導しやすくなるって事なのさ」
「へぇ…あれだけで?」
「うん、いくつかの方法があってね…」と言って教えてくれたのが以下の通り
1.くるぶしの上部分を縛り上げる(ボルビロフ)
2.ノクト(頭絡)を使って顎をすこし締め上げておく(口が開きにくくなって、群れを噛みついたりして誘導しなくなる)
3.ハナに尖った物をぶら下げる(馬がスピードを上げたり、頭を下げる(群れを追う)姿勢になると風圧でその尖った物がハナに当たって面倒な気分になる)
4.額にはちまきなどでシャガィを当てておく(馬が動くとゴリゴリして痛い)
5.前足に50cmくらいの紐を結びつけておく(後ろ足がこれを踏んで、前足を動かしにくくなる)
6.首とどちらかの前足をたすき状に紐をかけておいて、頭を自由に動かせないようにする
などのやり方があると、年長者から教わったんだとアーギーは言った。
馬の習性をよく知り、それらをピンポイントに、そうでありながら、最小限の手間と馬自身に負担を掛けないようなやりかたに、遊牧民たちの馬への思いを垣間見ることができるというものだ。



























